はじめに
2020年4月より、新学習指導要領の特別活動の項目で、キャリアパスポートの作成が導入されました。
文科省公式サイトでは、
今、子どもたちには、将来、社会的・職業的に自立し、社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現するための力が求められています。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/index.htm
この視点に立って日々の教育活動を展開することこそが、キャリア教育の実践の姿です。
学校の特色や地域の実情を踏まえつつ、子どもたちの発達の段階にふさわしいキャリア教育をそれぞれの学校で推進・充実させましょう。
とあります。今回はその取り組みのメリット・デメリットを教員の視点から考察します。
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ロリポップでブログをはじめるキャリアとは
まず最初は前提となるキャリアの定義を紹介しておきます。
人は,他者や社会とのかかわりの中で,職業人,家庭人,地域社会の一員等,様々な役割を担 いながら生きている。これらの役割は,生涯という時間的な流れの中で変化しつつ積み重なり, つながっていくものである。また,このような役割の中には,所属する集団や組織から与えられ たものや日常生活の中で特に意識せず習慣的に行っているものもあるが,人はこれらを含めた 様々な役割の関係や価値を自ら判断し,取捨選択や創造を重ねながら取り組んでいる。 人は,このような自分の役割を果たして活動すること,つまり「働くこと」を通して,人や社 会にかかわることになり,そのかかわり方の違いが「自分らしい生き方」となっていくものである。 このように,人が,生涯の中で様々な役割を果たす過程で,自らの役割の価値や自分と役割と の関係を見いだしていく連なりや積み重ねが,「キャリア」の意味するところである。
中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」(平成23年1月31日)
キャリアパスポートとは
キャリアパスポートとは、このキャリア教育と組み合わせて、以前から行われていた「学習の内容を記録し、振り返る活動」を、小中高と連続して行おうという取り組みです。
根拠となる記述は以下の通りです。
●学習指導要領特別活動第2〔学級活動・ホームルーム活動〕3内容の取扱い 学校,家庭及び地域における学習や生活の見通しを立て,学んだことを振り返りながら,新たな学習や生 活への意欲につなげたり,将来の(在り方)生き方を考えたりする活動を行うこと。その際,(児童)生徒が活 動を記録し蓄積する教材等を活用すること。
●中央教育審議会答申 平成28年12月21日 子供一人一人が,自らの学習状況やキャリア形成を見通したり,振り返ったりできるようにすることが 重要である。そのため,子供たちが自己評価を行うことを,教科等の特質に応じて学習活動の一つとして位 置付けることが適当である。例えば,特別活動(学級活動・ホームルーム活動)を中核としつつ, 「キャリア・ パスポート(仮称)」などを活用して,子供たちが自己評価を行うことを位置付けることなどが考えられる。 その際,教員が対話的に関わることで,自己評価に関する学習活動を深めていくことが重要である。
●中央教育審議会答申注釈 平成28年12月21日 (前略)…既に複数の自治体において,「キャリアノート」や「キャリア教育ノート」などの名称で,児童生徒 が様々な学習や課外活動の状況を記録したり,ワークシートとして用いたりするなど,子供自らが履歴を 作り上げていく取組が行われており,こうした取組も,「キャリア・パスポート(仮称)」と同様の趣旨の活動 と考えることができる。
【参考資料】キャリア教育リーフレットシリーズ (mext.go.jp)
メリット
順調に歩んでこられたことをいつでも振り返ることができ、自己肯定感につながります。また、成長の過程や全体像を把握できるようになり、自分のキャリアを考察する上で手がかりになるかもしれません。
また、連続した記録があることにより、幼少期のことが書類に目を通すと分かるので、教員側としては、学校で子供たちがどのようなことを考えているのかを把握しやすくなります。
デメリット
一言で言うと、「過去が足かせになる子供たちが一定数いることが浮き彫りになってしまう」危険性があるのではないでしょうか。
たとえばうまく学校生活に適応できなかった生徒が進学して新しい環境に入り、「心機一転頑張ろう!」と思っても、過去の情報がキャリアパスポートに残っており、それをずっと見続けなければならないのは、はたして適切なキャリア教育と言えるのでしょうか?そして、その子にとって知られたくない過去を教員が知ってしまうというのは適切と言えるのでしょうか。
家庭や学校での様々な記録を積み重ねていき、成長してから自らの境遇を客観視したときに、学校環境に適応してこられた子供たちと自分を比較して、限界を見てしまう子供たちがいるかもしれません。
参考:心理職におけるキャリアポートフォリオ
心理職のコンピテンシー(資格を持ち、専門的方法で判断・批判的思考・意志決定ができる力)を把握するために、自分のキャリアや業績・経歴に関する細かな記録を作成することが役立つと言われています。
これは、それぞれの項目に関する自分の評価・課題点を書き込んだり、自分が受けた研修の一覧を作り、それによって高められたコンピテンシーについて記すこと、定期的にキャリアポートフォリオを見直し、自分の心理職としての成長の全体像を把握しやすくなることを狙いとしています。
おわりに
心理職が行うキャリアポートフォリオと学校教育で行われるキャリアパスポートとの決定的な違いは、「作成者が主体的に行っているか否か」にあります。
振り返りをしたくなるタイミングは個人差があってしかるべきではないのでしょうか。思い出す権利と忘れる権利を両立させるという難しさを、この制度は秘めているように感じます。
さいごまでおつきあいいただきありがとうございました。


